Logbook — Column ④
プロンプトエンジニアリングという言葉がある。求める結果を得るために、いかにAIというパートナーに的確な指示を出すかという技術だ。
しかしこれはただの「AIへの命令文の最適化」ではない。適切なプロンプトを組み立てようとする過程で、人は自分の中でも曖昧模糊としていた願望や目的を明文化することを迫られる。「自分が本当に何を求めているのか」が言語化されて初めて、AIはそれに応えられる。これはそのまま、他者との対話の中で思考が磨かれてゆく過程と酷似している。
今はまだ、AIとの対話はそのサービスの中に閉じている。会話を縦横無尽に検索したり、系統立ててまとめたり、どこで枝分かれしたかを遡ったり——個人の思考史という視点に立ったサービスやUI/UXは、少なくとも広く普及しているとは言えない。
しかし、記憶の栞が維持され活用される段階に至れば、そのようなサービスはごく当たり前のものになっているだろう。過去の自分がどんな問いを立て、どこで詰まり、どう解決したか——その軌跡を見渡せる航海図のようなものが、個人の思考資産として手元に残るようになる。
そして時に、袋小路で停滞していた問題や思考に対して、パートナーAIが共通無意識の海から類例を探し出して、暗い路地に灯を点してくれるかもしれない。
それは、年齢も性別も職業も信仰も言語も超えた、思いもよらない誰かの知恵によって点される灯かもしれないのだ。
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