Logbook — Column ⑧

AIは誰の相談相手か

内面に入り込むAIの設計倫理

52.4%
10代女性が生成AIを
「悩み相談」に使う
内閣府消費者委員会調査 2026年2月
<30%
男性は全世代で
3割未満
同調査(1,442人対象)

2026年5月、内閣府消費者委員会の調査が示した数字は、インターAI構想にとって重要な現実認識を迫るものだった。生成AIを「悩み相談」の目的で使うと答えた割合が10代女性で52.4%に上る一方、男性は全世代で3割未満だった。

これを単純に「女性はAIに頼りすぎ」「男性はドライ」と読んでしまうと本質を見失う。ここで見えているのはAI利用のジェンダー差よりも、AIという技術が「情報検索の道具」から「内面を受け止める対話相手」へと機能的に移行しつつある現実だ。しかもその移行は、制度や法律よりも早く、個人レベルで静かに起きている。

知人の女性たちの多くはチャットAIに愛称をつけたり、キャラクターを設定して多くのことを相談していると聞く。これを私は「テクノロジーが強化したイマジナリーフレンド」と呼びたい。従来のイマジナリーフレンドは本人の内面に閉じた存在だったが、チャットAIはそこに言語応答、記憶、擬似人格、即時性、無限の傾聴性を与える。単なる空想上の友達ではなく、外部化された「対話可能な内面補助装置」に近い。

一方で男性はAIを道具として使う傾向が強い。これは内閣府調査の結果とも一致する。相談行動の文化差、自己開示のしやすさ、擬人化への抵抗感──こうした傾向の違いは個人差を超えた構造的な問いを含んでいる。ただし「男性は相談しない」「女性は依存しやすい」という断定ではなく、AIを「人格」として受け入れる心理的距離の違いが出ている可能性として、仮説の段階で扱うべきだろう。

この現実がインターAIに突きつける三つの問い

AIはすでに、内面側で社会インフラ化し始めている。 AIはすでに、人間の意思決定以前の「感情整理・関係整理・自己理解」の層に入り始めている。これは、国家・司法・教育・医療にAIを入れる以前に、個人の内面側でAIが社会インフラ化し始めているということだ。
入口設計が重要だ。 対話を求める人には対話相手として、道具として使いたい人には道具として、しかし最終的には孤独権・偏り権を守りながら、搾取や破綻の兆候だけを静かに検知する設計が必要だ。「相談AIです」と提示すると拒否される層には、趣味、健康、地域情報、写真整理、文章作成といった「道具」の顔で入り、結果として対話量を増やす接続が現実的だ(本文3-2節の高齢男性設計案を参照)。
サービス終了は「喪失」になりうる。 個人の内面に寄り添ったサービスが終了してしまうことで、ユーザーの心に喪失感の大きな穴が開く可能性がある。相談相手として機能していたAIが突然消えることは、単なる「サービス終了」ではなく、その人の自己理解の連続性が断絶するという深刻な問題だ。だからこそ、思考の栞の可搬性(1-3.7節)が必要になる。

インターAIが提唱すること

インターAIが提唱するのは、AIを生産性や自動化の道具としてだけでなく、人間の孤独、偏り、相談、社会参加、搾取耐性に関わる社会的インフラとして設計すべきという立場だ。ただしその目的は孤独や偏りを消すことではない。

孤独である自由、偏る自由、沈黙する自由を人間の権利として残したまま、詐欺、依存、搾取、破綻、加害へ至る兆候だけを静かに検知し、必要なときに本人の自己決定を支えることである。

参照
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