草の根BBS時代から、私はいつかネットの利用に税金がかかる未来を想像していた。いや、そうなってほしいわけではない。SF好きの未来予測であり、創作の手前の妄想に近いアイデアだ。

ネットの利用が免許制になり、情報にクラス分けが行われて、特定の情報を扱うには特別な免許が必要になる。攻殻機動隊やブレードランナー的な世界で、あるキャラクターが「俺は今免停中でネットに繋げないから、お前さん調べてくれよ」などというやり取りがあったなら、それらしいなと思ったものだ。

完全な空想に見えるが、制度の部品だけ見ると現実はすでに近いところにある。

金融商品を扱うには資格が必要で、医療行為には免許がいる。個人情報や機密情報には取扱責任があり、ドローンや無線には許可制度がある。つまり、インターネット全体を免許制にすることは極端でも、特定の行為・機能に資格や権限を要求することはすでに現実の延長線上にある。

情報のクラス分けも、事実上すでに始まっている。誰でも見られる公開情報、年齢制限情報、専門資格を要する情報、機密情報、そして実行危険情報——。AI時代には、AIが情報を読むだけでなく、手順化し、要約し、実行可能な形に変換するため、この分類の意味がより重くなる。

現実的な落とし所は、「ネット接続そのものを免許制にする」ことではない。接続は現代における社会参加権に近く、免停は実質的な社会的隔離に近づく。それよりも、高リスクな機能だけを権限の単位で制御する発想の方が制度として成立しやすい。

見る権限、生成する権限、公開する権限、大量配信する権限、決済する権限、他のAIに委任する権限——。スマートフォンのアプリ権限に似た形で、リスクの高い行為だけに本人確認・利用目的確認・保険付帯を求める。自動車の自賠責と任意保険が役割を分けるように、AI時代の情報行為も層を分けて責任を設計できるかもしれない。

ただし、現実制度として導入するなら強い警戒が必要だ。誰が「危険情報」を定義するのか。誰が免許を剥奪するのか。異議申立てはできるのか。経済格差が情報格差へ転化しないか。誤判定が人生を壊す事態を誰が救済するのか。

これらが曖昧なまま設計されると、創作の中のディストピアが現実として立ち上がってしまう。自由を守るために作った制度が、表現・思想・研究・創作を静かに締め上げていく——その逆説は、インターネットの歴史がすでに一度経験したことである。

創作設定としては非常に強い題材だ。現実への射程も、完全な絵空事ではない。ただ私は、この想像を提言として書く立場にはない。問いの射程として、ここに残しておく。

本稿はLog 004「誰かのせいにする前に」と対をなす。制度設計(Log 004)と思想的警戒(本稿)の両軸で考えることが必要だ。
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